私、タイルフィッシュと申します。すっとぼけた顔してますが、けっこう冬の魚の人気もんなんですよ。日本じゃぁ、京都あたりで「グジ」という名前で幅きかせてます。東京では「甘鯛」、板前さんには私を「しらかわ」って呼ぶ方もいらしゃいます。グジと呼ばれてる方々からは、とっても大事に扱われ、料亭のお座敷にもちょくちょく呼ばれたりします。
その反面、ニューヨークのチャイナタウンでは、パウンド4ドルぐらいでたまにイカより安く扱われれちゃったりして、もうイヤ〜ン。わかってないんだからん、中国の人。
いつもは、魚屋で切り身で売られているので、ちょっと私の全身姿を知ってる方、あんまりいないと思うので、グンジ家のおばさんに捌かれる前に、記念撮影しといてもらいました。私がバラバラになっても「あいつもこんな姿してたんだなぁ。」とたまには思い出していただけたら、魚やってた甲斐があったってもんです。
全体的にはこんな感じです。そうです、日本人と同じように頭でかいです。頭の他に口もでかいです。けっこう深い海に棲んでました。体には黄色い水玉模様があります。きれいな黄色でしょ。普通海で泳いでいる時、私の体はピンク色なんで、けっこうおしゃれ系の魚の部類に属してました。
自慢は黄色い背びれと、
しっぽです。豊満な体つきの割に、足首きゅっと締まってるのが自慢でした。
ってことで、これが最後の写真、今からグンジさんに捌かれて、料理教室のアストリア漬けの「漬けあがりサンプル」として、みなさんのお口に入ることになってます。
このウロコ落としで掃除してもらいます。おやっ、ウロコ落としさん、お宅おニューですね。あぁ、日本の築地から来られたんですかぁ。遠いところご苦労さんです。あなたにだったら私のウロコ落としていただいてけっこうですよ。身を痛めず、きっと美しく処理してくれることでしょう。よろしくお願いしますね。
あれっ、小出刃さん、お宅も日本からですか? ずいぶん、貰い物の多い家ですね、グンジ家ってーのは。種子島? おもしろいところからお出でですね。あの鉄砲の種子島からですよね。さすが、鉄砲が伝わった島だけあって、こういう刃物もいい感じですね。軽くて小降りっすね。これなら主婦の人たちでも、無理無く使えますよね。種子島の包丁職人さん、いい仕事されてる。見た目もキュートで、これなら、私、切り身になってもようござんすよ。
ご清聴ありがとうございました。おかげさまで無駄なく丸ごと、丁寧に、切り身になりました。今から塩を軽く振られ、いよいよグンジさんがこのところずっとあぁでもない、こうでもないと悩み抜いてできた漬け床に入らせていただきます。そこで、2、3日漬かってゆっくりさせていただきます。
今度、お会いできるのは、食卓です。こんがり焼かれて、いい感じになってまたお会いしましょう。では、皆様、ますます寒くなるニューヨークですが、風邪など召しませんように。ちょっと風邪を引きそうになったら、熱燗でも飲みながら、私を召し上がってください。ほっとした味に体もポカポカしてきますよ。