釣りの連中から「朝、来る時におまえんちの近所のサンドイッチ買ってきてね」と頼まれる「sal」という店のサンドイッチである。朝の5時から開いている。焼きたてのheroというニューヨークならではのイタリアンブレッドにハムとチーズがピシッとビッチリと挟んである長さ30センチはある巨大なサンドイッチである。
このサンドイッチのパンは、外はカリッと中は軽くさっくりした細長いイタリアンブレッドなんだが、ニューヨークではこれをヒーロー(HERO)と呼ぶ。どうしてこう呼ばれるようになったかっていうと、「このパンにいろいろ具を挟んだ巨大なサンドイッチを食べきると、あなたもヒーローになれる」なんてことを昔の新聞で書いた人がいて、それからこのパンのことを、またサンドイッチのことをヒーローと呼ぶようになったという話を聞いたことがある。
友人達のお好みは、まず基本となる「ヒーローに4種類のハム(普通のハム、ペパローニ、プロシュート、サラミ)とチーズを挟んだイタリアンコンボ」を頼む。ここから好みに分かれていく。
サイドオーダーに、トマト、オニオン、刻みレタスをまず頼んで一つのタッパーに入れてもらう。そして次に「レッドホットペッパー」か「スイートペッパー」を選び、それを潰してペーストにしたものか、丸のままか、または丸ままの中にチーズの入ったものかを選びまた別のタッパーに入れてもらう。まだ終わらない。次は「マスタード」か「マヨネーズ」か「ビネガー」かを選び別のタッパーに入れてもらう。水気のあるもの、ベタベタするものは、すべて分けておくわけだ。そうすると時間が経ってもサンドイッチがベトベトにならずフレッシュに食べられるというわけだ。この方法は実にすばらしい。日本のサンドイッチはここまで細かく指定できないですよね。こちらではこれが普通で、今だにどのように選択していいの悩むのに、それを私に3つも4つも、みんな別々のチョイスで買って来いと朝の5時から言うわけです。そして、それに飲み物もみんなバラバラ。ダイエットだの、コーヒーソーダだの……、ランチ買い出しは大変です。
でも、旨いんだよ、こうして細かく選ぶと。ほらっ、こんな感じの巨大なヒーローを、船の上で大口あけてパクつくわけです。