このワインは日本の山梨にある古いワイナリー「サドヤ醸造所」のワインだ。うちの父がこよなく愛したワインなんです。きちんとした味がします。きちんとしていた父でしたから、こういうワインが好きだったんだと思います。イタリアでもなくフランスでもなくナパでもなく、日本の味がする。そして「父」の味なんだよな。父は、私と弟が成人したと同時に、このワインを毎年赤と白各2本づつ買い、ワンセットは家族でのお祝い事の時に、そして残りの2本は、田舎を離れた弟と私に1本づつ持たせてくれた。それが30年ぐらい続いていたわけだ。私と旦那が結婚した時も、このワインでお祝いしてくれた。父へのお土産に奮発したマルゴーの高級ワインよりも、私にとってはおいしかったなぁ。昨年父が亡くなって、このワインの注文主がいなくなり、去年飲んだものが「父の形見のサドヤのワイン」となったのだが、この30年あまり続いたうちの風習にピリオドを打つのは偲びないということで、今年からうちの旦那さんがこのワインを注文し、実家の母の元に送り、いつものように、弟が1本、私が1本、それぞれのお祝い事の時に開けようということになった。夏、そのワインをニューヨークに持って帰った。この1本、旦那の誕生日の今日、開けた。父が横にいて一緒に誕生日を祝ってくれているような気がした。