今回、イリメニ湖での釣行を指南してくれたアルカージー師匠。生粋のロシアの人でした。
アメリカは好きじゃないそうです。爺さんはウラジオストック生まれ。だから海の魚の事もよく知ってました。
この湖を愛しているそうです。73歳。ここで好きな釣りをし続けるんだそうです。
この人に会えた「縁」を私は一生大事にしたいと思います。
釣りやっててよかったとつくづく思った。そして涙が出そうになった。
通訳の人に入ってもらっての会話だったわけですが、釣り好き同士で通じるものが山ほどあり、「あぁ言葉だけじゃないな」とも思った。
ウォッカを飲んでからは、もう2人でキャーキャー言った。でも押さえておきたいことはちゃんと聞いてきた。
今年のこの異常な温暖について聞いてみた。
「寒くないのは、爺さんにとって良い事か悪い事か」
「悪いことだ。湖が乾き過ぎる。雪が残ることで、湿気が残り、魚や草や木が潤い春につながるんだよ。だから雪が降らないのは困る」。爺さんはずっと農場をここでやってきた人だ。この辺りの自然の循環のことは誰よりも知っている人だ。その人がこういうのだ。ロシアにはロシアの魚がいて植物がいて、厳しい自然の中でもその環境に適応して育っていくわけだ。人も同じなんだろうな。
ここでの釣りの「好条件」を聞いてみた。「南風が吹く時がいい」とのこと。今日は南風ではなかった。
「釣りってのは、釣れる日もある、釣れない日もある。それが釣りだ」と一言。この言葉は正しい。そう思って今まで私も釣りをやってきた。
大丈夫よ、そういうことにこだわりはないの。たくさん魚が釣りたくてここに来たんじゃない。ロシアの釣り師達がいったいどういう処で、どういう考えで、釣りを楽しんでいるのかが、一目でいいから見たかったのだと伝えた。「おまえ、変な奴だな」と笑ってたけど。はい、私はへんなおばさんです。
すると、師匠にあたりが。「魚が回ってきたぞ。おしゃべりばっかりしてないで、おまえの竿もチェックしろ」。
「ほれっ、俺の竿に来たぞ。小さいけど釣れたぞ。おまえが見たかったイリメニ湖の魚だ」
「逃がすか?」
「いや、食べる。どうしても食べたい。」
(つづく)