今日はロングアイランドの先っちょに旦那と「ちょっくらイカ釣ってデート」を。一足早いサンクスギビングとクリスマスのプレゼントを買っていただき(冬釣り用のブーツと防寒フード、結局釣りグッズとなる)、その足で昼飯食べにジェームスポートのエルボールームへ。どうしてもここのステーキが食べたいってことで。で、ランチステーキではなくフルポーションのシェルステーキを。
で、いきなり旦那、ウエイトレスさんに「拙者は和食のシェフであります。今は北国はロシアのサンクトペテルブルグで働いておりまするが、かねがねこちらのステーキの焼き方に並々ならぬ興味を持っており、さしては、ぜひキッチンに入らせていただき、そのいかなる技でこのような素晴らしく真っ黒な、そして焦げ味のしない実に肉の風味に溢れたステーキを焼かれているのか、ちらりでいいから見せていただきたい次第でございます。ぜひ、シェフのお許しをつかまつり候、よろしくお願いいたします」っぽいことを言い出した。完全にヤンキーのウエイトレスのおばちゃん、「うちのステーキは噂に聞く通り1958年から守り継がれた超シークレットのタレをマリネして作ってるから、さぁどうかしらねぇ。OK、ちょっとシェフに聞いてきたげるわっ」と。旦那すかさず、「秘伝のレシピを聞きたいんじゃないんでござる。僕の知りたいのはどういう風に肉を焼いてるかってーのを見たいのでござりんす」と、懇願する方向性をはっきりさせた。で、ウエイトレスのおばさん「OK。そーなの、タレじゃないのね。肉なんか普通にタレ付けて焼いてるだけだから見ても面白くないわよ。OK、それなら簡単。あたしがうまい事シェフに言ってあげるわよ」とキッチンに消えていった。ここが素人と玄人の違いなのだ。タレ……だいたい想像つくし、外部から何が入ってるか教えていただいたことはあるの。想像通りのものが入ってたわけで。じゃなくて、焼き方なの、旦那がどーしても知りたいのは。今までこの店でこの真っ黒ステーキを食べる都度、旦那は、こうにちがいない、あーにちがいないと、ずーっとその方法を私にしつこく言っていたし、家でも数回試してみたけど、ちょっとあそこまでの見事な真っ黒ぶりにはならなかったのよね。
ウエイトレスが足早に戻ってきた。そして「OK、カモンべイビー。あんたにシェフが見せてあげるってよ。どう私の交渉振り。ばっちりでしょ。さぁ、いらっしゃい、キッチンへ!」と案外あっさりと話が決まった。私は、ダメって言われるだろうなと思っていた分、驚いたな。旦那、喜々としてウエイトレスと一緒にキッチンに消えていった。隣りのテーブルのおじさんが「おおっ、やったな」とうちらの話を聞いてたみたいで、グッドサインを私によこす。私もグッドサインを返した。
キッチンから旦那の質問の声が聞こえて来る。けっこう時間が経った。旦那がすっきりしたそしてニヤリとした顔でテーブルに戻ってきた。「どうよ、解決した?」との私の言葉に「ここ数年のウヤモヤがすっきりしたぜ」と。そこからは、いかにどうなってこうなっていたかを一部終止はなしてくれた。「なるほど」の連発。決定的に衝撃を受けたことが3つあった。それは、あなたもキッチンに入ってシェフから教えてもらってください。その一つに今までに旦那が見た事のなかった強力な調理機具があったことはお伝えしておこう。家ではできないわけだ、ハハハ。
そして、今日のステーキは特別に旨かったぜ。